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特別支援教育

意思・要求の伝達、コミュニケーション

コミュニケーション絵カード

茨城県特別支援学校A
絵記号とその絵記号に対応した文字をグループ化したカードを、高等部2年生の生徒専用に作成しました。その絵にGM Authoring Toolを用いてドットコードをかぶせて印刷し、音声ペンで触れることで音声が再生されるコミュニケーションカードを31枚制作。
生徒たちは日頃から音声ペンを使用していたこともあり、自らコミュニケーションカードをタッチし、音声ペンを耳に当てる動作を数回行い、一生懸命に発話する様子が見られました。さらに好きなカードが出ると書かれた絵記号を真似する様子も見られました。保護者からは「自分が伝えたいことがカードに載っていて、カードを使って伝えようとするときはうれしい(安心している)様子だった」という感想も寄せられ、音声ペンが生徒にとって有効なコミュニケーションになっていることがうかがい知れる結果となりました。

気持ちシート
「はい」「いいえ」カード

栃木県特別支援学校A
中学3年のダウン症の生徒に対し気持ちシートを作り、今の気持ちはどれかを知らせる取り組みを行いました。そのときの気持ちが気持ちカードの表現だけでは表せなかったり、気持ちそのものの理解に至っていなかったりする際に使える「はい」「いいえ」で答えられるカード、気持ちがふさぎ込んだ時に教師とやり取りできるよう自分の気持ちに近いものを選ぶシートを作成しました。
教師が言葉で話しかけ、生徒が音声ペンを使って回答するという形でコミュニケーションを図りました。生徒は自分の気持ちを伝えることに頑なな態度を見せることもありましたが、徐々に「嫌だった」「あやまる」などの言葉も選択することができるように。また自分と向き合い自分の気持ちと折り合いをつける場面で音声ペンを使うことで、自分を客観視できるようになりました。

朝の会司会カード
意思伝達カード

大分県特別支援学校A
重度・重複障害(急性脳炎後遺症による上肢全廃・下肢全廃)で車いすを使用し、慰労的ケアを受けている小学部2年の児童に対し音声ペンの活動を行いました。 人と関わることが好きな児童が友達や先生と話せるようになればと思い、朝の会の司会カードを作成。司会者の言葉を教師が録音し手順カードにステッカーシールを貼りました。ペンの使用に際しては傾斜を付けたダンボ―ルで支える補助具を作成し、ペンを握った角度で固定できるようにしました。音声ペンから流れた音声で友達が立ったり動いたりすることが嬉しい様子で、友達との関りも促進されました。合わせて行った「すきなドーナツ調べ」の活動でも音声ペンで質問することで友達がすぐ近くまで来て選んでくれたり、居住地校交流のときも児童の質問に対してさらなる会話が生まれたりと疑似会話体験ができ、コミュニケーション力が向上しました。

イベントゲームカード・呼名カード

特別支援学校(知的障害)A
発語はないが発声はあり、依頼や是認拒否などの意識や要求をサインで伝えたり、簡単な言語指示が理解できる小学部4年の児童に対し、児童同士のコミュニケーション増加を目標として音声ペンによる実践を行いました。 生活単元学習の「つき組紅白うたあてクイズ大会」「つき組ぐるぐるうたすごろく大会」で選択肢絵カードやチームメンバーの呼名カードを作成し、児童同士のやり取りの活発化を目指しました。実践では選択肢に貼り付けられたドットコードを音声ペンでタッチし再生することができ、再生された音声を聞いた他の児童が「あってます」「ちがうよ」などの発言をしてフィードバックする場面が見られるなど、児童同士のやりとりが成立。また呼名カードはタイミングに合わせて使用できるよう1枚ずつ渡すようにすることで、場面の区切ができ、相手を意識することにもつなげることができました。

朝の会・帰りの会 司会カード

栃木県特別支援学校B
発語がないが要求は写真・絵カードの指差しや教師の手を引いたりして伝えることができる小学部6年生の児童に音声ペンを用いた実践を行いました。コミュニケーション手段の拡大を目指し、それまで児童が発言・号令をかける際には教師が代弁していたものを、音声ペンで代用できるようにしました。朝の会では挨拶カードで「おはようございます」「げんきです」等と発表できるように、帰りの会では日課カードでその日に頑張ったできごとを発表できるようにしました。加えて号令カードを作成することで、児童が一人で司会進行ができるようにしました。
実践により発表や号令が一人で自分のタイミングでかけられるようになり、また周りの友達が反応してくれることで相手に音声で伝わる楽しさや達成感を感じる様子も見られました。

朝の会・帰りの会 司会カード

京都府特別支援学校A
発語はあるが言葉として周りが理解するのには難しい時がある、脳性麻痺で車椅子生活を送る中学部1年の生徒に対し、音声ペンを用いた活動を行いました。 ドットシールを貼ったシートを用意し、朝の会、帰りの会、授業や給食の挨拶などがクラスのみんなの前で行えるようにしました。
クラスの活動で音声ペンを使用することで、係活動の決まった言葉以外にも伝えたいことや体験をして感動したこと、正確に伝えたいことなどが増えてきました。また音声ペンで言葉が伝えられるようになったことで自発的な意思伝達が増え、音声ペン以外のコミュニケーションツールにも広がりを見せています。現在はiPadのアプリ「指伝話」を使ってコミュニケーションを意欲的に取ることができるようになりました。

接客カード

千葉県特別支援学校A
内言語はある程度育っており指示や伝達については概ね理解できるものの、発語は「ママ」「ハイ」に限られ、要求が伝わらないとイライラしたり多動などの様子も見られる中度の知的障害を持つ高等部3年の生徒に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。 年3回行われる作業製品販売の際でお客様とコミュニケーションを取ることを目標に、状況に応じた声がけ接客シートを作成しました。「いらっしゃいませ」「少々お待ちください」「ありがとうございました」などのセリフ5種類にイラストを付けて1枚の表にしました。生徒がシールをタッチして音声が流れた後、他の生徒が復唱するような形で練習しましたが、当日は気持ちが焦ってしまい全体的に支援が必要でした。しかしながら主体的に活用しようという意欲が見られました。

音楽カード

東京都特別支援学校A
重度・重複学級高等部3年の生徒と音声ペンを用いた2つの実践を行いました。簡単な指示は理解できるものの、自分から絵カードを使って意思を伝えるという行為がほぼないため、「カードを使って自分の気持ちを伝える」「自分で選択する」の習得を目指しました。生徒が好きなTDLのアトラクションと音楽をリンクさせた音楽シート、卒業式で歌う曲のシート、生徒が好きなキャラクターと音楽のシートの3点を作成。活動は使用したい時に生徒が「ペンカード」を教員に渡しすことでペンを提供し、生徒がタッチして音楽を聴く、という流れで実施しました。この実践を通して活動の流れを理解できるようになった他、ペンカードを見るだけで期待感を持つようになり、自己選択で好きな音楽を自由に楽しめるようになりました。

発語・発音の明確化

朝礼発表用 日付カード

千葉県特別支援学校B
発語はあるものの発音が不明瞭で、慣れない言葉や咄嗟の場面では吃音が出てしまう中学1年生の男子生徒に対し、音声ペンの取り組みを行いました。月、日、曜日に音声を入れ、自分で順番に並べてから音声ペンでタッチし全員の前で発表する教材を作成。毎日の朝の会で日にちを読み上げる係を担当させるようにしました。生徒の課題である吃音をなくし、スムーズに発音できるようになるため、まず音声ペンで音声を聞いてから発音するように指導しました。 実践を通して音声ペンの音声をしっかり聞いてから発表する流れができ、発音は改善。また毎日の朝の会で読み上げを担当することで吃音がなくなり、曜日や日にちも少しずつ理解できるようになってきました。今後は2桁の拗音を音声ペンを使って習得することを目指します。

録音音声フラッシュカード

千葉県特別支援学校C
ひらがなが読めるようになってきて他者とのコミュニケーション意欲も高く、体験したことを3語程度で話すことがある小学部6年生の児童に対し、音声ペンでの発音練習学習を実施しました。ひらがなの単語とイラストを裏表にしたフラッシュカードに音声を紐づけ、音声で文字の発音を学ぶ手作り教材を作成。
最初は音声ペンでシールをタッチし、教師があらあじめ録音した音声に合わせてペン先で文字を指しながら発音する、という流れで行いましたが、次第にカードを見る・自分で録音する・録音した音声を聞いて確認するという作業ができるようになりました。音声ペンを使い自身で発音練習ができることで、相手に伝わるようにという心理負担がない中で、自ら不明瞭な部分を修正でき効果的でした。

校内アンケート(調査・報告)

千葉県特別支援学校D
軽中度の知的障害の生徒3名に対し、音声ペンを使った体験学習を実施しました。校内全クラス(小~高)にアンケートを取り、普段疑問に思っていることを集計。集まった疑問の中から生徒たちが解決できる話題5つを取り上げ、疑問項目は掲示物に掲載。疑問の答えは発語ができる生徒を選抜し、音声ペンに録音してワクワク感を演出しました。音声ペンへの録音作業は、教師と一緒に事前に用意した原稿を読む練習をしてから実施しました。録音に参加した生徒からは、自分の声を録音して客観的に聞くことで自分自身の話し方の特徴などに気づくことができた、といった感想が上がりました。また完成した掲示物は音声ペンとともに校内へ掲示。校内の誰でも再生できるようにすることで、多くの児童生徒が気軽に聞くことができました。

自発性・積極性・役割の遂行

朝の会・帰りの会 進行カード・ボード

千葉県特別支援学校E
知的障害と自閉症の小学部4年の児童に対し、一人で発生や自発的なサインで人に伝えることを目標に、朝の会(帰りの会)の進行カード・ボードを作成しました。 会の流れをわかるようにしたカード(文字、絵、写真、ドットコード)をホワイトボードに貼り付け、1枚ずつ外して進行するという方法で会の司会を実施。呼名用のカードには児童や教師の写真にドットを貼り付けるようにしました。
活動当初に作成した冊子式の進行表では流れに沿ってページを「めくる」という行為が難しかったため、1枚ずつ「朝の会の流れを示したカード」を「はずして進行する方法」に変更。 次第に教師の指示がなくても一人でカードを音声ペンでタッチして進行できるようになり、さらには音声の言葉尻を模倣して発音する姿も見られるようになってきました。

朝の会・帰りの会 進行表
絵カード・友達の写真カード

福岡県特別支援学校A
決まった発語がなく身振りなどの表現手段もはっきりしない、コミュニケーションの起点になることが難しく情緒が安定しない、という小学部3年の知的障害を持つ児童に対し、音声ペンの活動を実践しました。 絵カード、児童の写真カードを作成。加えてめくるタイプの進行表を使って朝の会、帰りの会の司会進行を1人でできるように取り組みました。児童は日頃から音声ペンを使用していたこともあり、コミュニケーションカードをタッチして音声ペンを耳に当てる動作を数回行い、一生懸命に発話する様子が見られました。さらに好きなカードが出ると書かれた絵記号を真似する様子も見られ、保護者からは「自分が伝えたいことがカードに載っていて、カードを使って伝えようとするときはうれしい(安心している)様子だった」という感想も寄せられました。

朝の会・帰りの会 進行シート
呼名用写真

千葉県特別支援学校F
発語もあり語彙力もあるが人前に出ることを極端に嫌う中学部1年の生徒に対し、音声ペンを使用した活動を行いました。 一人で人前でできることを増やすため、音声ペンで朝の会の司会を一人で行うためのシートを作成。出席確認では座席表の通りに写真を並べてドットシールを貼り、生徒が自分でクラスメイトの呼名ができるようにしました。また「先生の話」ではどの先生に話してもらいたいかを本人に選んでもらえるよう、教師の顔写真をペンでタッチすれば音声で呼びかけられるようにしました。
最初は教師と一緒に会の流れを確認しながら行っていましたが、徐々に自席ながら一人でも行えるようになり、次へ進むタイミングも話している人の動向を確認してから正確に進行できるようになりました。今後は全員の前に立って行うことが目標です。

朝の会・帰りの会 進行カード・シート

栃木県特別支援学校C
自発的に物事を伝えることや発語はないものの指差し選択やサイン模倣などができる、知的障害と自閉症がある小学部2年の児童に対し、音声ペンを使用した活動を行いました。 音声ペンを使って会の進行や授業の号令を行えるよう、進行カードとシートを作成。児童は音声ペンの使用経験があったため仕組みを理解しており、日課の確認では時々促しを受けながらではあったが、日課票のカードに上から順にペンを充てて進めていくことができました。授業の号令では教師が1枚ずつカードをめくっていくことで音声ペンで号令をかけることができました。1学期はサインの模倣が難しく、教師が手を持って一緒に動かしながら当番活動していましたが、音声ペンの使用で自発的に当番活動を行うことができました。(2学期からは音声ペンではなくサインで司会や号令を実施)

朝の会の進行表・号令シート

栃木県特別支援学校D
発語はないがひらがなカタカナを見て指示や内容を理解でき、指差しや単語カードで意思表示ができる一方で、意思の表出が難しく手持無沙汰になると自分の髪の毛を抜いて遊んでしまう、自閉症の小学部6年生の児童に音声ペンを用いた実践を行いました。児童が主体的に朝の会の進行、毎授業の号令を行えるよう、朝の会の進行表や号令の掛け声を入れたシートを1冊の本にまとめました。音声ペンから流れる音声は、教員の声ではなくクラスの他の児童が入れて親しみが持てるようにしました。
実践を始めた当初は進行するタイミングにも自信がなく、教師の表情や合図を確認してから音声ペンで進行をしていましたが、慣れてくると児童自身が挨拶や進行のタイミングを自分で判断して進められるようになりました。本実践を通して号令のタイミングが把握できるようになったり、音声ペンの声に対する友達のリアクションも意識して楽しめるようになりました。

朝の会・帰りの会 司会 カード

千葉県特別支援学校G
身辺自立や言葉での簡単なコミュニケーション、身近なものや挨拶などの理解はでき、積極的に人と関わろうとするが言葉が不明瞭で伝わらないことがあるダウン症の高等部1年の生徒に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。「日直の進行や健康観察で音声ペンを使ってみよう」に取り組むことで言葉で相手に伝えること、そして毎日学級の仕事に取り組むことでクラスの一員だということを自覚し積極的に学校生活を送ることを目標にしました。実践を通して朝の会では日直の進行表を音声ペンで読み上げて進行したり、健康観察で友達や教師の名前を読み上げたりすることができました。音声ペンに慣れてくると朝の会だけでなく、友達の名前を呼ぶ場面や教師を呼ぶ場面でも自分から音声ペンを準備し操作する様子も見られるようになりました。音声ペンを使用し友達との関りが増えたことで発語も増え、以前よりも積極的に活動にも参加するようになってきました。

 朝の会司会進行表・日程ボード
振り返り日記・音楽ボード

高知県特別支援学校A
表出言語はないが簡単な言葉や絵カードを理解して集団行動が行える、知的障害と自閉症がある小学部6年の児童に対し、音声ペンの実践を行いました。朝の会の進行表・日程ボードを作成。進行表では司会のセリフを流し、日程ボードでは学習名称を読み上げるようにしました。またなぞり書きで日記文と絵を描き、毎日の振り返りの学習をする「日記」教材も作成。生徒が好きな曲を選択して聞けるよう、音楽ボードにもドットシールを貼りました。実践を通して児童は朝の会の流れを覚え、活動の順番に沿ってシールをタッチして進行することができるようになりました。出席調べでは呼ぶ友達の順番を自分で決めて写真カードで呼ぶこともでき、日記でも支援なしで児童なりの発表ができ、他の児童の発表にも期待感を持って聞く様子も見られました。音声ペンは表出言語を持たない生徒でも主体的な学習ができ、役割を果たしたり、他者から認められる経験ができました。

生活単元学習 司会カード

千葉県特別支援学校H
発語はないが発声はあり、サインや指差しなどで要求は伝えられるが、決まった流れや毎日の活動と違うことがあると気持ちが不安定になり、物や友達に手を出してしまうことがある中学部2年の生徒に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。 発声とともに音声ペンを用いて発表すること、一人で音声ペンを使って司会をすることを目標に設定。提示カードにドットコードのシールを貼り、司会進行ができる教材を作成しました。初めに教師と一緒に音声ペンでシールをタッチすることで音声を確認。音声が流れることがわかると指を指したり言葉がけでシールをタッチできるようになりました。また練習を繰り返し、お楽しみ会の司会も行うことができました。発語はないものの言葉を伝える意識があり「だぁ!」「あっ!」などの発声とともに音声ペンを使用することができました。今後は学校生活の中で「トイレに行ってきます」「外に行きます」などが伝えられるようにしていきます。

文字と音のマッチング・語彙の習得・点字の習得

ひらがな五十音チップ

神奈川県特別支援学校A
ひらがなは日常的に使えるが発語や書字の際、突発的に音韻の誤りが見られたり、自身の考えを他者が理解できるように伝えることが難しい、軽度の知的障害を持つ児童に対して音声ペンを用いた実践を行いました。 まずは音韻の誤解の有無を確認。次に絵カードを書いてあるひらがなを呼称し、文字チップを探し当てた後、音声ペンで再生した音声を聞き、探し当てた文字の正誤判定を行いました。音韻が間違っているものに関しては児童の声を音声ペンで録音し、正しい音に近づける練習を行いました。音声ペンの使用方法や学習手順はすぐに理解し積極的に取り組むことができました。また当児童は他の学習中には環境音に気を取られる様子が見られていましたが、音声ペンでの学習では機器への好奇心と多感覚での学習ということもあり、最後まで集中して行うことができていました。音声ペンを使えば自ら答え合わせや修正ができるので、指導者からの誤答指摘が減ったことも意欲向上につながったものと考えられます。

ひらがなパズル

千葉県特別支援学校I
他者とのコミュニケーション意欲は高く、3語文程度で話したりできる一方、馴染みのない言葉などは不明瞭になりやすく、ひらがなの文字列は一文字ずつになると間違いやすい、小学部5年の児童と音声ペンを用いた実践を行いました。 市販されている教材(Smart Angel 森のおもちゃたのしくおぼえるひらがなパズル)に、音声ペン用のドットコードシールを貼りました。また文字のピースは1mm程度底上げして抜き取りやすいように制作し、国語算数の時間に活用しました。実践は音声ペンでシールをタッチする→音声を聞く→文字チップをさがす→文字チップをはめる、の手順で行いました。児童は音声ペンに興味を持ち、教師の支援がほとんどなくても学習に積極的に取り組むことができました。指導開始時には20文字しか読めなかったひらがなも、学習後にはほぼすべてのひらがな(清音)が読めるようになりました。視覚的な情報と聴覚的の情報に加え、手指の操作を通して達成感を得られやすい本教材は有効的でした。

物の名前カード
(音声入りひらがなカード)

栃木県特別支援学校E
日常会話のやりとりは十分可能、話が大好きで断片的に思い出して話すこともできるものの読みの学習が難しい、という中学部3年の知的障害のある生徒に対し、音声ペンの実践を行いました。分割された音声入りのひらがなカードと絵カードを作成。絵カードを見てひらがなカードを並べ、単語を構成するという課題に挑戦しました。絵カードは生徒に親しみのある野菜や果物の名前を中心にしました。実践はまず絵カードの名称について発問→音声をヒントにしてランダムに並べられたひらがなを正しく並べる→読み方を確認する、という手順で行いました。本実践を通し、時折並べたひらがなカードの向きが間違っていることはあるものの、音声をヒントにしてひらがなカードを正しく並べることができるようになりました。本生徒にとっては苦手意識があると思われる読みの学習でしたが、一日の学習の振り返りの中で、その日の一番楽しかった学習に本学習を上げるなど、意欲的に楽しみながら取り組むことができているようでした。

あいうえお表・物の名前絵カード

栃木県特別支援学校F
発語はないが母音は発音できて簡単な指示理解と要求が伝えられるが、聞かれたことに答えることが難しい小学部5年の児童に対し、音声ペンの実践を行いました。ひらがなはほとんど理解していて友達の名前や簡単なものの名前などをマッチングすることはできるものの、一文字ずつばらばらになっていると間違えることがため、聞いた音とひらがなの文字を一文字ずつマッチングすることを目標に、あいうえお表の裏にその物の名前が書いてある絵カードを作成しました。実践ではこの絵カードを見て名前を1文字ずつ音声ペンでタッチし、音を聞くようにしました。また正しくタッチできたかどうかは、自身で絵カードの裏を見て確認させました。本実践を通して、児童は食べ物の名前や日常的に使っている箸や皿などの物の名前を覚えることができ、また教師側からの音声での指示を聞いてわかる物の名前も増えました。今後は濁音や半濁音が入ると難しくなるので一旦清音のみで、動詞と名詞をまぜて学習を進めていきます。

教科書ことばカード
問い音声入り単元テスト

長野県特別支援学校A
読み書きや言葉の概念の獲得が困難で、学習意欲が低下していた自閉症のある小学部5年の児童に対し、音声ペンの実践を行いました。新しい単元に出てくる漢字の熟語や言葉をピックアップし、音声ペンを使った「言葉カード」を作成。またデイジー教科書を使い、教科書の内容学習のためにオリジナルの問いを作成、音声ペンで再生できるようにしました。合わせて単元テストの問いも音声ペンで再生できるように作成しました。実践はカードに漢字や言葉の用例をイラストとともに書いて本人の声で音声ペンに録音したり、カードをめくり漢字や言葉を自分で読み上げさせる、という方法で進めました。読めないカードがあると音声ペンで再生させ、確かめながら学習を進めることで、次第にすらすらと読めるようになりました。デイジー教科書のコンテンツについても、音声ペンがあることで教師の支援が不要になりました。児童一人で単元テストを受けることができ、高得点をあげられたことから、学習内容の定着も確認することができました。

ことばカード・文字チップ

 山口県特別支援学校A
体の動きがぎこちなく自分で動きの大きさや声のコントロールが困難でうまく話すことができない多動性・衝動性の強い、自閉症と知的障害を併せ持つ小学校1年の児童に対して、音声ペンの実践を行いました。他者と言葉で通じ合うことができないもどかしさを解消させるため、文字と絵、音声と絵を対応させる活動を行いました。「くもんの言葉カード」と文字チップを使用。どちらもドットシールを貼り付け、音声は音声合成アプリで作成しました。言葉カードの下に文字チップを並べる方法で練習を行い、できるようになったら次はチップを使用せずに言葉カードに書いてある文字を一文字ずつ読むように促し、正誤も音声ペンで確認させました。注意が散漫になりがちな生徒でしたが、音声ペンへの興味の強さと視覚聴覚触覚のすべてを使うことで、集中して長時間取り組みことができました。また発音への恐れがなくなってきたこと、発音が伸びてきたことで他の児童とも交流ができるようになってきました。

点数字の読取り学習プリント

大阪府特別支援学校A
全盲の重複障害を持つ中学部1年の生徒に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。生徒は小学部で一文字ずつの点字の読みについては学習していましたが、数字の点字は読むことができなかったため、点数字の読み取り学習に取り組みました。実践はドットコードシールを貼り付けた音声入りの点字プリントを作成し、生徒自身が正誤確認をできるようにしました。プリントは数字を構成する「数府」と「かな」を一ます空けたものを準備。「数府」「ます空け」「あ」と書き、横に音「1」というような音声データを収録しました。最初は教員が録音しましたが、慣れてきたら生徒自身が録音するようにしました。まずは点字を読み取り、その読み方を声に出す、音声ペンを使って自身で正誤を確認する、という流れで練習。数字が読めるようになってきたらマス空けを無くしていき、数字を含む文章題にも取り組みました。本実践は一人で家でも復習ができたため文章題も読めるようになり、他の生徒と同じ点字プリントが読めるまでになりました。

点字図形 弁別学習カード

大阪府特別支援学校B
中学部の全盲重複生徒3名に音声ペンを用いた実践を行いました。「点図で書かれた図形(三角形、四角形、円など)の弁別を体験的に学習する」取り組みを実施。図形の形と各辺の長さの弁別を行うため、ドットコードシールを貼り付けた図形カードを作成しました。実践を行う前は生徒たちは具体物での形の弁別は行えましたが、点図で書かれた図形の触図は初めてだったっため、点字を読むスピードも遅く答えを読み取るのにも時間がかかっていました。本実践は、生徒自身が音声ペンで答えを確認しながら学習を進める形をとりました。丸・三角・四角は小学校2年程度、ひし形正方形は総学校4年程度の内容のため、生徒の到達度に応じて課題を選別。また長さについての学習では、自分の体の部分で比べやすい長さから学習するようにしました。カードはグループで学習できるように2枚ずつ用意し、生徒同士でマッチングゲーム形式にしたことで、競争心による集中力も養われ、答えを自分で確認できることから達成感を得ることもできました。

他との協調性・落ち着き感・自己肯定

朝の会、帰りの会 めくり式進行カード
音声入り給食献立カード

栃木県特別支援学校G
発語のない自閉症の児童と発語のないダウン症の小学部1年の児童2名に音声ペンを用いた学習を実施しました。自閉症の児童は1日の流れをなんとなく理解し自分から取り組めることもある一方、舌や指など体の部分が気になって見つめたり、ひも状の物で遊んだりと落ち着きがない面がありました。ダウン症の児童も積極性があり自分でやりたい気持ちが強いものの、思い通りにいかないと怒ることが多い児童でした。本実践では音声ペンを使った朝の会、帰りの会の進行用めくりカードを作成。また献立の写真を入れる枠にシールを貼り、毎日の献立も発表できるようにしました。
両児童ともに音声ペンの使用には意欲的に取り組むことができ、全体的に教師の少ない支援で司会進行をすることができました。その他の児童も音声ペンに興味を示し、使用するたびに注目する様子が見られました。今後はシールによりタッチしやすくするため、立体的な枠を設けるなどの対応を行う予定です。

朝の会の手順表・めくりカード

茨城県特別支援学校B
発語はなく車など興味があるものが目に入ると手を振りほどいて走っていってしまったり、活動中にじっと座っていることが難しく床に寝転んだり、大人の髪の毛や服を引っ張ったりしてしまう知的障害のある小学部1年の児童に対し、音声ペンの実践を行いました。朝の会の行動をおおまかに表すシンボルを貼り付け、司会の音声が流れる手順表を作成。その横には同じ絵を使用し、会の進行状況を表すめくり式のカードも準備しました。当初はペンを口に入れたりしていましたが、経験を重ねたことや集中力を切らさないよう司会を他の児童と一項目ごとに行うことで、徐々にこなせるようになりました。また他の児童が音声ペンに興味を持ち喜んで前に出て司会している姿に影響され、椅子に座って友達の姿に注目できるようにもなりました。実践を続けることで、他の児童の動きに気を取られ興奮して走り回るなどの行動などが落ち着き、他の児童の活動を見て同じ行動ができるようになり、掴む、握る活動も上手になりました。

朝の会 天気カード、名前カード、
時間割カード

京都府特別支援学校B
脳性麻痺、急性脳症後遺症で右片に麻痺がある中学部1年の生徒に対し、音声ペンを使った実践を行いました。本生徒は発語は限られつつもジェスチャーや表情、アプリなどでは考えが表現でき、好意的な人には積極的にかかわることができわかる一方で、自分が困っているときに助けを求めることが苦手で自己肯定感の低いところがありました。 本実践では朝の会の司会を自立して行うために音声ペンを使用。音声ペンを使う前は教師と発語できる文字を一緒に読みながら司会をしていましたが、時間がかかる上、聞いている生徒もわかりづらいという問題がありました。音声ペンでの実践ではホワイトボードに貼ってある天気カード、名前カード、時間割カードにドットコードを貼り、司会が行えるようにしました。本実践では自分で電源を入れて一人で会の進行や友達の名前を呼べることができるようになり、嬉しい様子でした。また司会ができるようになったことで自信がつき、生徒の自己肯定感向上にもつながりました。

物・場所の名前・数字カード

千葉県特別支援学校J
毎日使う言葉は不明瞭ながら表出できるもののその他は難しく、また自分の気持ちを表現できないときに声を上げたり行動が荒くなる中学部2年の生徒に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。発語が増えて自分の思いが伝わる機会が多くなれば心の安定にもつながるのではと考え、正しい言葉の習得を目指しました。生徒は教室の移動や場所の切替時に気持ちが不安定になることが多いため、日課票の活動場所の写真カードにドットシールを貼り、移動前に音声ペンで場所の名前を確認、発音するようにしました。また数字にドットシールを貼り、数字の名前を確認してからマッチングする学習も合わせて行いました。実践を通し、正しい発音で行くべき場所が分かったり行きたい場所が伝えられ、移動教室がスムーズに行えるようになりました。数字に関しても音声を確認して正しい名前で言うことができるようになりました。またドットシールを貼っておくと自発的にペンを出して音声を確認する様子も見られました。

体験学習・学習補助

音しおり、音日記

兵庫県盲学校A
視覚障害に肢体不自由、知的障害を併せて有する中学部2年の生徒に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。全盲ですが点字が読めない状態のため、自身で行事のしおりなどを読むことができるように日時や持ち物等を録音して確認できるように作成しました。また夏休みには音日記を課題に出しました。行事のしおりは日時や持ち物などの音声は校長先生や実習生の先生などに録音してもらったりすることで、楽しんで聞くことができました。音日記はスクラップブック1ページに1枚ドットシールを貼り、同じページに夏休みに決めた目標が達成されたら好きな立体シールを貼るようにしました。日記は妹と一緒にインタビュー形式で録音されていたり、歌を歌ったり、花火大会の音が録音されていたりと工夫された日記帳が出来上がりました。またそれを2学期に友達や他のクラスの生徒にも発表することができました。2学期以降も体験学習でお店の人にインタビューしたり、家族への誕生日メッセージや宿題を録音したりするなど、継続的に活用できました。

3年生を送る会進行
事前アンケート

千葉県特別支援学校K
程度が異なる知的障害がある中学部1・2年の生徒6名に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。生活単元学習において「3年生を送る会ゲーム係~ダンス曲を決めよう~」を実施。 3年生を送る会に向けて企画や当日の進行等に積極的に取り組むこと、友達と協力して準備活動に取り組むこと、の2点を目標としました。クイズでは生徒が問題を考えている間のシンキングタイム曲を音声ペンで録音し、司会係が出題後にドットシールをタッチして音楽が流れるようにしました。またダンスでは音声ペンを使ったアンケートボードを作成し、3年生に事前に好きなダンス曲の調査を行うようにしました。
クイズでは本番前に練習を繰り返し行うことで活動内容を理解し、当日も進んで音声ペンを操作して音楽を流すことができました。ダンスに関しても3年生が音声ペンで音楽を確認し、アンケートボードにシールを貼って投票するようにしました。自分達が準備したアンケート形式で曲が決まったことで、より達成感を味わうことができた様子でした。

卒業生を送る会

大阪府特別支援学校C
発語・発音は苦手意識がありつつも慣れると大きな声で話すことができ、ひらがなやカタカナ、小学1年生の漢字が少し書ける程度の知的障害を持つ中学部1年の生徒に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。卒業生を送る会で使用するための「司会用原稿」と「つかいかたプリント」を作成。本生徒はひらがなを読むことはできるものの、1文字ずつ拾って読むために聞き手側が文章として聞き取ることが困難でした。そこで文字を読み取るのではなく、文章を暗記をさせ聞き取りやすい音声で発表をすることができるよう、司会用原稿の自分が読むところに「文の前にシール」を貼り付けました。また加えて友達が読むところには「文の後にシール」を貼り付け、学校と家庭で練習ができるようにしました。発表当日は友達との順番も理解して上手く進行、聞き取りやすい発音で行うことができました。自主練習が楽しかった様子で、「朝の会の進行表にもシールをつけてほしいと」申し出てくるなど、音声ペンでの学習に対しての意欲も見られました。

文化祭発表「魔法学校」

千葉県特別支援学校L
欲求や気持ちを言葉でやりとりできたり視線や発声、体の動きで表現することができる肢体不自由(重複学級)で車いすの小学部5年の児童と音声ペンとドットリーダー(G-Pen Blue)を用いた実践を行いました。文化祭で「魔法学校」をテーマに映像や光、音を使い、闇の魔法使いを倒す物語を杖に見立てた音声ペンやドットリーダー、スイッチを使って進めていく形で発表を行いました。発表用シートはナレーション用と映像用の2つを作成。シーンの画像ごとにドットコードを貼り付け、画像下のシールに触れることで区切りのいいところまで進むようにしました。児童はテーマに興味を持ち、楽しんで練習に取り組むことができました。またペンで触れると音や映像が流れ、自分の行動に対する反応がすぐに分かることが活動意欲にもつながりました。発表当日はたくさんのお客さんがいる中でも自信を持ってしっかりとペンを操作して発表することができ、人前に出ると緊張してしまう他の児童もペンでの映像再生を自信を持って行うことができていました。

しゃべる文化祭宣伝ポスター

石川県特別支援学校A
コミュニケーションが取りやすい軽度の児童から自閉的傾向のある児童、日常生活面で多くの支援を要する重度な児童まで、様々な障害を持つ小学部1年から6年までの計78名の児童に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。文化祭の中で5年生が行う「おばけやしきコーナー」を、小学部の児童により関心を持ってもらうべく「しゃべるポスターでおばけやしきをアピール!」を作成。8つ切りサイズのポスターにテーマや日時、場所、宣伝などの音声が入ったドットシールを貼り付け、近くにペンを設置しました。ポスターは音声入りの掲示ということで、音声ペンに関心を持った児童が休み時間等によく来てはイラスト等と一致した音声を聞く様子が見られました。音声が友達の声ということで関心も増した様子で、お化け屋敷の期待感へつなげることができました。

音声付き壁面掲示・楽譜

栃木県特別支援学校H
中学部3年の生徒を対象に音声ペンを用いた実践を行いました。中学部最上級生として中学部全体に学習成果を伝えたいという生徒の思いを実現することを目標としました。事前学習の中で音声ペンを使用した壁面掲示を作成。校外学習の紹介を音声ペンで行えるようにしました。掲示物を他学年の生徒たちが見て喜んだり、自分の音声を聴いている姿を見ることは、生徒たちの自己所有感の高まりにつながり、最上級生としての自覚を促すことにもなりました。
また同校では、中学部生徒の学校祭における合奏発表の練習でも音声ペンを使用。各パートごとに作った手作りの楽譜にドットシールを貼り付け、教師がついていなくても生徒が音声を聞きながら楽器の練習ができたり、メロディに合わせて演奏ができるようにしました。

沖縄Songs シート

東京都特別支援学校B
日常的な会話は概ね理解でき、音楽がやダンスが好きな高等部3年生の生徒2名に対し、音声ペンを用いた実践を行いました。「調べる」→「まとめる」→「発表する」という一連の流れを意欲的に取り組むことを狙いに、修学旅行先である沖縄にちなみ「音声ペンを利用して曲を紹介しよう」の活動を行いました。生徒たちに沖縄にまつわる楽曲を20曲程度提示し、その中から10曲を選定させました。選んだリストは沖縄Songsとしてポスターにして、音声ペンとともに廊下に掲示しました。普段は活発なやりとりが見られない生徒2人が、曲の選定にあたり意見を交換する姿も見られ、意欲的に取り組むことができていました。曲を準備して選んで録音する一連の活動を、準備段階から生徒と一緒に取り組んだことで「自分で作った」という達成感を与えることもできました。

学年ソングを手話で歌おう

千葉県特別支援学校M
言葉で意思疎通ができる生徒、カードやジェスチャー、発声などで自分の気持ちを伝える生徒などが所属する高等部1年の生徒9名に対し、「動画を再生して学年ソングの手話を覚えよう」に取り組みました。 みんなの投票で決めた学年ソング(いきものがかり/SAKURA)の歌詞の横にドットシールを貼り、G-Pen BlueでタッチするとiPadやiPhoneの画面に手話の指導動画が流れるようにしました。まず歌詞の「さくら」「ひらひら」など、フレーズごとに区切ってバラバラにし、生徒同士で協力しながら組み立てさせることから始めました。本実践ではフレーズごとに練習ができたため、歌詞と手話の意味をリンクさせながら一つずつ覚えることができました。また普段は人前で歌うことに自信がない生徒もみんなの前で発表することができました。